共役事前分布
事後分布の式がシンプルになるように,以下の共役事前分布を用いることが標準的となっている.
ディリクレ分布
多項分布に対する共役事前分布はディリクレ分布$\mathcal{D}(\mu|\alpha)$である.
$$\mathcal{D}(\mu|\alpha)= \frac{\Gamma(\sum_{j=1}^{k}\alpha_j)}{\Pi_{j=1}^k\Gamma(\alpha_j)}\Pi_{j=1}^k\mu_j^{\alpha_j-1}$$
ここで,$\alpha$はディリクレ分布のパラメータであり,$\Gamma$は以下に示すガンマ関数である.
$$\Gamma(x)=\int_0^\infty t^{x-1}e^{-t}dt$$
ベータ分布
二項分布の事前分布として使えるのがベータ分布である.
$$p(\mu|a,b)=\frac{1}{B(a,b)}\mu^{\alpha-1}(1-\mu)^{b-1}$$
ここで,$B(a,b)$は2次元の多項ベータ関数を表す.
$$B(a,b)=\int_0^1\mu^{a-1}(1-\mu)^{b-1}d\mu$$
ガンマ分布
観測値が正規分布$\mathcal{N}(x|\mu,\sigma^2)$に従うとする時,その平均パラメータ$\mu$に対してベイズ推定を行うための共役事前分布としては正規分布$\mathcal{N}(\mu|\Psi,\rho^2)$が使える. 分散$\sigma^2$に対してベイズ推定を行う場合を考える. $\sigma^2$の事前分布として正規分布$\mathcal{N}(\sigma^2|\phi,\eta^2)$を使うと,事後分布は事前分布と同じ関係式にならない.(理由は参考資料のp97) そこで,分散の逆数$\lambda=1/\sigma^2$を精度パラメータとよび,精度パラメータの共役事前分布として,ガンマ分布$\mathcal{G}(\lambda|\kappa,\xi)$を用いる.
$$\mathcal{G}(\lambda|\kappa,\xi)=\frac{\xi^\kappa}{\Gamma(\kappa)}\lambda^{\kappa-1}\exp(-\xi\lambda)$$
$\kappa$は形状パラメータ,$\xi$はレートパラメータと呼ばれる.
ガンマ分布の余談
$\kappa=1$のガンマ分布は指数分布と一致する.
$$\mathcal{G}(\lambda|1,\xi)=\frac{\xi}{\Gamma(1)}\exp(-\xi\lambda)=\xi\exp(-\xi\lambda)$$
$\xi=\frac{1}{2}$に設定し$\nu=2\kappa$で定義されるパラメータで表したものは$\chi^2$分布と呼ばれる.
$$\chi^2(\lambda|\nu)=\mathcal{G}(\lambda|\frac{\nu}{2},\frac{1}{2})$$
正規-ガンマ分布
正規分布$\mathcal{N}(\mu,\lambda^{-1})$のパラメーターについて平均$\mu$は正規分布,精度$\lambda$についてはガンマ分布が事前分布として使えることを述べた. 今回は,$\mu$と$\lambda$を同時に求めることを考える. $\mu$と$\lambda$の同時分布を正規-ガンマ分布$\mathcal{NG}$とよぶ.
$$\mathcal{NG}(\mu,\lambda|\psi,\beta,\kappa,\xi)=\mathcal{N}(\mu|\psi,(\beta \lambda)^{-1}\mathcal{G}(\lambda|\kappa,\xi)$$
一般的な確率分布のパラメータとその共益事前分布
参考
- 手塚 太郎,"しくみがわかるベイズ統計と機械学習"